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ジュニアチーム監督現場レポート
「走る」ことから学べること 〜スポーツへの動機付け〜

今回は、法政大学陸上競技部監督として、イエテボリ・ヘルシンキの世界陸上2大会で銅メダルを獲得した為末大ら多くのアスリートを発掘、指導した経歴を持つ、渡部近志先生にお話を伺った。陸上競技指導の第一線から退いたばかりという先生の活動は、ジュニアの指導へとフィールドを広げている。

渡部近志先生
渡部近志先生

「走る」という基本動作は、こどもの成長にどのような影響があるのだろうか?遅い子速い子の違いはどこにあるのか?またスポーツシーンだけでなく、広く子どもの成長という広い視点で読んでいただきたい。
日常の「走る」と競技の「走る」の違いは?
「走る」ことはだれでもできることですが、スポーツにおいて「走る」ということは非常に重要な要素です。子どもたちのサッカーの試合などを見ていて思うのですが、戦略的にしっかりと「走り方」が教えられていないのが現状です。真剣に「走る」ということがどういうことなのか?動作を理解し、正しく走れるようになることは、こどものスポーツへの動機付けにもなるのです。
学校では、通常の体育の授業に陸上がありますが、「走る」ということはこどもの成長にどのような影響があるのでしょうか?
足の速い子にはスポーツ好きが多いです。このことには相関があるみたいですね。足の遅い子にはスポーツ嫌いが多い。かけっこの遅い速いは、子どものスポーツへの関心に大きな影響を及ぼします。遅い子が抱える悩みは大きいです。まずは速く走ることより、楽しく効率的に走ることを教えることが大事。そこから、スポーツへの興味を引き出してあげるのです。好きになることは、上手への近道です。
子どもが徒競走でビリだった。そんな時、どんな風に接すれば?
たくさん誉めてあげてください。日本特有の文化というか国民性かもしれませんが、誉めてもらっても素直に喜べない。本当は、お母さんそんなこと思っていないんじゃないの、なんて疑いたくなる。アメリカでは、「GOOD JOB!」という表現をよく使いますが、よくやった!と平気で言えるし、素直に受け入れられる、そんな土壌があります。お子様を前に、場がしらけたり、そんなこと思ってないくせに、なんて思われたらどうしようなんて恐る恐る声をかけてはいませんか?そういう気持ちは伝わってしまうものです。ちょっとくすぐったいですが、もっとオープンに接することをしてみてください。
速く走るためのポイントは?
速く走るということよりは、正しく走ることを教えることが大切です。
・・・・コツ探しですね。コツをつかんだ子は伸びるし、面白くなる。「走る」ことは、「跳ぶ」こと。「駆け足」とは違います。重力に反して、自分の体を地球に放り出してあげる感じです。ポイントとしては、50Mを何歩で走るか計って見てください。50歩だったら、次に49歩で走れれば、一歩分速くなります。
イメージトレーニングも大切です。自分が走っているところをイメージして、感覚をつかむ。これは、「走る」ことだけではなくて、色々な場面で役に立ちますね 。
今の子どもたちについて

全国的に太り気味の子が多いですね。さらに「走る」ために必要な脚力(筋力)が弱い。体が硬い子も多いです。絶対的に運動量が少ないんですね。ぜひウェイトトレーニング(自重)をやっていただきたい。また、家でストレッチをしたり、親子で運動体験をすることで、楽しさを感じる機会を増やして欲しいですね。最近の子どもたちは、競争競争の中で生活しているので、 ゆっくり走るということができない。このことも指導してみて驚いていることです。ウォーミングアップで行なうジョグでは、我先と先頭から飛び出してしまう。ゆっくり走ることの意味、大切さも教えないといけないとつくづく実感しています。つっぱしるだけじゃなくて、時には歩いてみる、ということが理解できると、いろいろな面で応用ができるようになりますよね。

保護者の皆さまに望むこと

1つめは、カラダの手入れをしてください。スポーツをすれば、子どもでも疲れます。関心のある子は自分でやりますが、なかなかそうはいきません。家でストレッチやお風呂でマッサージをしたりするだけでもいいでしょう。あっちが痛いこっちが痛い。我慢するのではなく、痛くならないようにケアすることが大事です。
2つめは、食事に気を配ってあげてください。お菓子など間食をするため、食事の時間にお腹が空かなくて食事量が少ない、ということはありませんか?間食せず、運動をたくさんしていれば、自然とお腹が空きます。そうなれば、食事がもっと美味しく食べられます。今さかんに言われている「食育」は、子どもの成長にもとても大切なことです。逆に言えば、スポーツは、子どもの「食」への動機付けにもなりそうですね。プロのアスリートになりたいという夢があれば、また、レギュラーになってみんなから注目されれば、食事やケアについても自分から意識するようになるでしょう。「自分で納得してやる」これは大きな成長です。
3つめは、お子様の感性を育ててあげてください。スポーツだけではなく、様々な経験をすることは子どもの世界を広げてあげることになります。音楽や絵画もいいでしょう。語学も面白いですね。スポーツで有名選手になりたいのなら、なお更です。可能性を狭めず、広く大きく育ててあげてください。トップになったときに、教養としてにじみ出てくる選手に育って欲しいと思います。

今の保護者のみなさんは、学校での体育、部活経験をされている方が多いと思います。そこで学んだことは、社会のモラルにもつながっていますよね。子ども時代からスポーツを生活の中に取り入れていくことは、とてもいいことだと思います。

PROFILE

渡部 近志 (わたべちかし)
・MIPスポーツ・プロジェクト副理事長 
・陸上競技110mハードル日本代表
法政大学学生時代には、110mハードル関東インカレ、全日本インカレ優勝。1970年第6回アジア大会(バンコク)陸上競技110mハードル金メダル。法政大学では、陸上競技部監督として、イエテボリ・ヘルシンキの世界陸上2大会で銅メダルを獲得した為末大ら多くのアスリートを発掘、指導した。現在、法政大学経済学部教授。

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