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トレーニングの進め方
発育とトレーニングの関係
子どもの筋力の発達には神経系が大きく関わっています。思春期前には特に神経系の発達が著しく、筋力向上は主に神経系機能の発達に拠ります。筋・骨格系の発達はゆるやかで、筋肉量が見る見る増えていくということはありません。この時期には遊びを取り入れながら、走る、跳ぶ、投げるといった「基本動作」の修得を進めましょう。トレーニングの負荷は自体重か、ごく軽いものを用います。
一般に「思春期」といわれる、身長の増加率が最も高くなる頃からホルモンの分泌がさかんになり、筋肉が少しずつ発達して、男の子はたくましい体に変わっていきます。ですから筋力やパワーの増大を目的とするトレーニングは、発育がほぼ完了する高校生くらいになったら行わせる、というのが医学や体力科学での原則になっています。ただし骨の成長軟骨で活発な増殖・成長が起こるため、運動の刺激が強すぎると骨や関節に障害を発生する可能性があるという点に注意が必要です。
発育の個人差を考慮する
成長期の子どもの成長度や体力には個人差があります。同じ年齢であっても身長の低い子と高い子がいます。この両者を比べれば当然背の高い子のほうが体力があり、この格差は小中学生の時期に最も大きくなります。すべての子どもに同じトレーニングを行わせると、成長の遅い子にとっては強度が高く、早い子には強度が低くなってしまいます。ですから同じチーム内でもそれぞれの成長や体力に合わせてトレーニング内容を調整しなければなりません。
スポーツで起こりやすいケガ
子どもは骨格や筋肉が未熟であるために、特有のケガがあります(例:成長軟骨損傷など)。また上半身の筋肉が弱い傾向や、ケガをしやすい箇所(膝・肘・肩・首・足首)の強化も考慮してプログラムを作成する必要があります。
子ども特有のケガについてもう少し具体的にお話しましょう。成長軟骨とは結合組織の一種ですが、骨が硬くなる思春期前に成長軟骨を損傷すると、その後の骨の成長に悪影響を与えます。筋力トレーニングにおいてもこの骨端軟骨の損傷が多く報告されていますが、そのほとんどは頭上へ最大に近い負荷を挙上する運動を行っている際に起こっています。この予防策としては、頭上にウエイトを挙上する際には軽めの負荷を用いることです。
また子どもが早いうちから激しい運動をしていると骨端軟骨の損傷を招き、骨が変型する恐れがあるとも言われています。これは一方向への運動のくり返しによって筋発達がアンバランスになり、関節に無理を強いた結果です。リトルリーグ肩(野球肩)などがその例です。
関節軟骨の軽いケガのくり返しが重大な損傷を引き起こすこともあります。これは関節面から関節軟骨の一部が剥がれ落ちる離脱性骨軟骨炎の原因ともなっており、ピッチャーやテニス選手の肘、長距離走選手のくるぶしなどによく起こります。膝頭の下がコブのように腫れあがるオスグッド・シュラッテル氏病も、脛骨に付着している膝蓋腱で骨の遊離が起こったものです。
どんなスポーツでも小さなケガの積み重ねは大きな傷害につながります。わずかな痛みでも軽視してはいけません。そして正しい筋力トレーニングによって弱い部位を強化し、筋力のアンバランスを取り除くこと、疲労が回復できないほどトレーニングさせないことが、大きなケガを予防するポイントです。
トレーニング計画の立て方
1年中同じ内容のトレーニングを行っているジュニアチームが多く見うけられます。トレーニングに計画性がないと効果的に体力が向上していかないだけでなく、疲労によるケガの発生にもつながります。シーズンごとに明確な目標を立てて取り組むようにしましょう。
ペリオダイゼーション型またはサイクル型といわれるトレーニング方法は、試合当日に最高の能力が出せるよう、時期によってトレーニング量や強度を変えて行くというものです。期をいくつかに分け、その期ごとの目標を明確にします。始めは量が多いのが特徴で、反復回数が多く負荷は低めにします。プログラムが進むにつれ強度は上がっていき、筋力とパワーを向上させ、ピーク時には短時間に高強度のトレーニングを行います。

※ただしこれは一般的なものであり、思春期前の子どもにはそのまま適応できません
ストレッチングを取り入れる
現代のライフスタイルの影響で柔軟性の低い子どもが増えています。体を柔軟に保つことは生涯をとおした健康維持のためにも重要です。身体が硬いとケガを起こしやすいだけでなく、競技能力にも悪影響を及ぼします。日ごろからストレッチングを習慣づけましょう。
ストレッチングの注意点
リラックスした状態で、気持ちよく伸ばせるところまで。痛みを感じるところまで無理に伸ばさない
反動をつけず、ゆっくりした動作で行う。筋肉は反動により急に伸ばされると、伸びすぎを防ぐために逆に緊張してしまう。
ストレッチング中は自然な呼吸を続ける。子どもは声に出してカウントすると呼吸を止めずに行うことができる。
正しいストレッチングの方法
(1) 気持ち良い「張り」が感じられるところで10秒ほど止める
(2) 「張り」の感じが薄れてきたところで、さらに10秒ほど伸ばす
(3) (1)と(2)をくり返す
※具体的なストレッチングの種目は「ジュニアスポーツのための筋力トレーニング」で紹介しています
見逃せない“遊び”のメリット
かつて日本の子どもたちの遊びといえば屋外で体を使うものでした。鬼ごっこ、棒のぼり、馬跳び、うんてい、ゴム跳び、縄跳び、ドッヂボール・・・・・こうした子どもたちの遊びには、敏捷性(ある方向にすばやく体を動かす能力)、パワー、バランス能力、柔軟性、コーディネーション能力など、さまざまな体力要素を向上させる動きが含まれています。
しかし今や環境の変化(広場など安心して遊べる場所の減少)や子どもたちの生活パターンの変化(習い事、テレビゲームの普及など)によって、遊びは家の中でするものが主流になってきています。外遊びをしない子どもたちは必然的に運動不足に陥ります。それだけでなく、体力要素と密接に関わる神経系機能の発達も損なうことになります。
神経系の発達は13歳を過ぎる頃にピークを迎えるため、ジュニア期は神経系を向上させる絶好の機会なのです。だからこそ、外遊びをしなくなった現代っ子のために、指導する側は積極的、意識的にこうした遊びを取り入れ、楽しさとともに教えることが重要です。ウォームアップの一部として取り入れるのもよい方法です(ちなみに鬼ごっこは、いまやプロスポーツ選手のトレーニングにも採用されている立派なトレーニング種目です)。