
夏季のパトロール期間中、"10秒メシ"でおなじみの「ウイダーinゼリー」にお世話になったライフセーバーたちは多いはずだ。体力の消耗が激しいライフセーバーにとって、1日の始まりに、海水浴客で混雑する昼食時に、手軽にそして確実に栄養補給できるゼリー状の食品は実に心強い存在なのである。「ウイダーinゼリー」の発売元、森永製菓株式会社と、日本ライフセービング協会が公式パートナーシップを結んで今年で10年。矢田雅之社長と小峯 力理事長の対談が実現した。
田久保雅巳編集長(以下、田久保):森永製菓は10年前から「ウイダーinゼリー」のご提供ということで、日本ライフセービング協会とのオフィシャルパートナーシップを結んでいます。この10年を振り返ってどうでしたか?
矢田雅之社長(以下、矢田):10年というには長いようで短いものですね。「ウイダーinゼリー」が発売されて来年で15年目を迎えますが、その3分の2でパートナーシップを結んできたことになるわけです。当時、私は食品事業本部の本部長という立場でしたが、1994年に発売された「ウイダーinゼリー」のマーケティングを通してライフセービングを知りました。実はそれまでは、ライフセービングとはどういう活動かあまり詳しく知らなかったのです。ところが小峯理事長にお会いして、お話をするうちに我が社の目指すところと共通の部分があるとわかりましてね。つまり我々は、お菓子を通しておいしい、楽しいという感動を世界の子どもたちに与えたいと考えているわけです。そこが、パトロールを通して水辺の事故を未然に防ぎたいと願う、ライフセービング活動に共感した理由です。
松ア 勲部長(以下、松ア):ライフセービング活動を応援するに至った背景には、実はこんな話もあるのです。ウイダー製品をマーケティングする上で、どんなスポーツやイベントをサポートするのがいいのか、たくさんの候補をピックアップして検討していた時期がありました。数あるスポーツやイベントの中で、一番"ウイダーらしい"と思ったのがライフセービングだったのです。発売してまだ4年目でしたが、そろそろ少しでも社会に貢献できる活動をしようということで、パートナーシップを結ぶことになったわけです。
小峯 力理事長(以下、小峯):森永製菓さんからサポートの申し出があると聞いた時には、正直、びっくりしました。歴史もあり、日本人なら誰でも知っているお菓子メーカーが、まだまだ知名度の低いライフセービング活動を応援してくれるのかと素直に嬉しかった反面、その期待に応えることができるのだろうかと、身震いするような不安にかられたことも事実です。それでお会いした時には、とにかくライフセービングのすべてを矢田社長にお伝えしようと、もう厚かましいくらいにしゃべってしまいましてね。
矢田:いやぁ、それが合っちゃったのですね。生きざまというか、価値観というか、ものの考え方というのかな。これは出会いだと思いました。あの時、小峯理事長にお会いしなければ、ライフセービングというものを深く知ることもなく、こうしたおつき合いもなかったでしょうね。
小峯:私たちとしては、1年でおつき合いが終わってしまうのではないか、と心配していたのですが……。
松ア:弊社の場合、基本的にはスポンサードの契約は1年単位なのです。しかし、ライフセービングのような活動は長く応援していきたいと思いましたので、まずは3年契約でスタートしました。とはいっても、当時はウイダー製品が3年後まで継続しているかどうか分からない状態でした。それでも、この活動は継続して応援するのだ、と矢田は言っていましたね。過去にスポンサードをしていて、契約を終了したスポーツイベントもたくさんあるのですが、矢田が社長になる時も、ライフセービングだけは辞めるな、と念を押されたことがとても印象に残っています。
小峯:矢田社長は、このパートナーシップでは我が社は一喜一憂しません、とおっしゃってくださったのです。あなたたちは素晴らしいことをやっているのだから自信を持ってやり続けてください、とエールを送られたことが本当にありがたかったです。そして何より、地道なパトロール活動にこそ尊さがあるのだからと、10年の長きにわたってその部分をサポートしていただいていることに、全国のライフセーバーを代表して感謝したいと思います。
矢田:地球温暖化の問題を見てもそうですが、今の時代、短時間で何かを成し遂げようするのは難しいことですよね。そして、個人や一企業がどうがんばったところで、地球温暖化の問題は解決しません。みんなが問題意識を持ち、それぞれができる分野で努力していくことが大切なのではないでしょうか。ライフセービングもこれと同じですよ。いくらライフセーバーが尽力しても、彼らだけでは、残念ながら事故をゼロにすることはできないでしょうね。ライフセービング活動に共鳴するからこそ、我々にできる部分で応援していきたいと思っているのです。
小峯:矢田社長もおっしゃいましたが、ライフセーバーだけでは水辺の安全は守りきれないのです。守る人・守られる人がはっきりしているというのは実は不自然なことで、この関係が一定だと事故はなかなか減らないということが分かってきました。守り守られる関係、人と人がお互いに支え合う関係こそが健全だと思うのです。だからこそ、ライフセービングという活動を通して命の大切さを知ってもらいたいと思っています。子ども時代にライフセービングと出会えば、溺れたら苦しい、レスキューする方も大変だ、もし誰かが水の事故で亡くなったら家族や友だちはとても悲しい、ということなどにも気づいてくれるでしょう。そこから命の大切さに目を向けてくれれば、いじめや暴力、凄惨な事件などが減っていくと信じています。究極は一人一人がライフセーバーとなり、ライフセーバーのいない社会をつくることができれば……。理想だと言われるかもしれませんが、私はそういう希望を持って活動しています。
矢田:いやいや、何事も思わなければ実現しませんよ。思っても実現させることは難しいですが、それでも思って行動し続けることが大切だと思います。ところで、自分の命は自分で守る、というのは実は当たり前のことですよね。つまり、自立するということです。ところが今の日本人は、大人も含めて自立できていない人間が多すぎるのです。自分で判断しないで、何でも人のせいにしてしまう。子どもは親や大人の背中を見て育ちますからね、やはり大人がもっとしっかりしなければいけないのでしょう。そういう点からも、ライフセービングに期待しています。
田久保:今後もライフセービング活動を応援していただけるのですね?
矢田:もちろんですよ。価値観に共感しての応援ですから。これからも大いにがんばっていただきたいですね。







